2、世界で最も裕福な国の世界で最も不幸な子どもたち
世界の貧困地域と日本の子育て環境
さて、ヨシリツ株式会社では、ワールドビジョンという世界の貧困地域の子たち達に支援活動を展開しているN G O団体を長年にわたって支援しています。これは、ヨシリツのホームページでも記載していますが、子どもの玩具を販売しているヨシリツ株式会社は、LaQを世界の国々に輸出もしています。ただ、日本製玩具のLaQを輸入して販売できる国は、世界の中でも裕福な部類の国となっています。このためヨシリツでは、取引上あまり接点のない貧困国の子どもたちにも何らかの接点を持ちながら、これらの国々が将来的に貧困の格差を解消して、LaQを買って遊べるようになって欲しいという思いと、子どもに関わるビジネスを展開していることから収益の一部を子どもの福祉に使って欲しいという思いから、このような支援活動を行なってきました。この支援活動を行う中で、2016年にワールドビジョンとヨシリツ株式会社の共催で、紀伊国屋書店新宿本店のイベントスペースにおいて、日本とLaQを輸入している国々の子どもたちの生活環境と、ワールドビジョンが支援している貧困地域の子たちの生活環境を比較したパネルディスカッションを開催しました。
このパネルディスカッションは、私が企画して実現したものですが、ワールドビジョンの親善大使をされている女優の酒井美紀さんをお招きして、私と酒井さんで各国の様子をお話させていただきました。このイベント開催に際して、LaQの各国の代理店からその国の子どもの置かれている状況をレポートしてもらいました。
このレポートは、1、現在の社会状況における子どもたちの生活状況・2、社会状況が子どもたちに与えているポジティブな影響・3、社会状況が子どもたちに与えているネガティブな影響の3点を軸にLaQの代理店をしている会社の経営者の皆さんへの質問を送りました。2016年と少し前の状況で、かつLaQの代理店を経営するオーナー経営者の皆さんの個人的・主観的な各国レポートですが、それぞれのお国柄が出ていて面白い内容ですので、以下ご紹介したいと思います。
フランス
フランスでは、約50%の夫婦が離婚しています。これは以前に比べて増加傾向にあります。その結果、子供達は母親だけに育てられるか、血のつながりのない義理の父親と一緒に生活していることが多くなっています。
子供にとっては、夫婦喧嘩の耐えない劣悪な家庭環境から両親の離婚によって解放されることは良いことですが、しかし多くの場合両親の離婚と言う事実は、子供の教育にとっても子供の自己肯定感の育成にとっても非常に大きなインパクトを与えています。
最近のフランスでは、両親が離婚するとその子供は、一週間は母親と共に過ごし、次の一週間は父親と一緒に過ごすと言う生活パターンが増えています。このことは、血のつながりのある両親の両方との接触を続けられると言う意味では良いかもしれませんが、教育的な意味では、少し疑問を感じるところです。というのは、そもそも離婚してしまった両親は、それぞれ全く違う価値観を持っておりこの全く違う価値観の両親の双方と接触を続ける場合、そこ子が人生や精神的な拠り所とする価値観が確立できない恐れがあるからです。
さらに義理の親との関係についても、問題があります。現在血のつながりのない義理の父親または母親は、一緒に生活し、子供の教育に対して大きな役割を負っているはずであるのに、法律的な権利は認められていません。この点については、これから社会的な議論を尽くして法整備を行わなければならないところです。ただこの問題を議論するにあたっては、その前段階として「家族」という言葉の定義自身が現在のフランスの社会状況に合わせて根本的に問い直されなければならないのではないかと思われます。
香港
香港は、物質的に豊かで小さな都市です。そして全ての子どもは9歳までは、無償で、公的補助を受けた学校に通うことが出来ます。そのような環境で香港の教育制度は、より良く運営されているでしょうか?また香港の子ども達は「良い教育」を提供されているでしょうか?私は、教育について私は香港の子ども達は全く悲惨の状況にあると言いたい!以下詳細に述べます。
まず、学校間の熾烈な成績競争があります。これを「トップスクールランキング」といい、このランキングされている学校は「ドランゴンスクール」と呼ばれています。これら「ドラゴンスクール」は、学校間の競争に勝ち抜くためより頭の良い、才能豊かな子どもを選別しようとしています。そしてこのような熾烈な受験競争のプレッシャーにより、毎年数人の子ども達が自殺をし、また精神的に病んでしまう子どもが増えています。このことは香港の社会的問題となっています。このような状況に対して、よりお金持ちの人々は、私立のインターナショナルスクールを選ぶことが多いです。
アメリカやカナダ、オーストラリアでは、大体5−7歳で小学校に入りますが、香港はどうでしょうか?多くの「プレイグループ」という教育プログラムが、生後4ヶ月から始まります。音楽・英語・読書・フラッシュカード・交通教育等々です。ちなみに私の娘のカトリーナは14ヶ月から「プレイグループ」に通い始めましたが、周りの親から「そんなに遅く教育を始めるなんて!」と非難を受けました。しかし現在4歳になって周りの子供達に比べて全く問題なく発育しています。しかし、一般的な親や「ドラゴンスクール」にとっては、このような「プレイグループ」の修了証や成績表が大きな意味を持っています。
アメリカやヨーロッパの子ども達が、グラウンドを駆け回り、自然を探索しお家で玩具で遊んでいる間に、香港の子ども達は3−4歳から様々な試験や検定を受けてランキング付けをされています。これは何のためでしょうか?それは親たちが、より良い、より優秀な、トップクラスのドラゴンスクールに子どもを通わせたいからです。
ではここで、先述した私立のインターナショナルスクールについてお話ししましょう。ここでも入学するには傑出した才能や優秀さ、もしくは強力なコネが必要です。さもなければ1億2000万円以上の学校債を購入することでも入学が可能です。さらに新しいプールやクラス、図書館などを寄付しても良いでしょう。そうすれば、教室のドアの小さなプレートに彼らの父親の名前が記載され、子ども達はささやかなプライドを感じることが出来ますし、クリスマスショーでの主役をもらえるかもしれません。どうやらお金が子どもを有能にし、人気者にしているようです。誰がこの馬鹿げた債権を買っているのでしょう?私は声を大にして言いたい!香港は狂っている!
運転手やシッターが、ベントレーやポルシェで送迎をし、修学旅行はベニスやイギリスへファーストクラスやビジネスクラスでフライトしている。
全ての子どもがそうだとは言わないですが、しかし、こんな例もあるのです。これは十分に狂っているでしょう!?
4歳児の母として、私は娘をこのような貴族的な生活に入れることは、全く気が進みません。娘が将来もし自分がこれだけ贅沢な生活をするためのお金を稼ぐことが出来ないということになったときが心配だからです。
さらにインターナショナルスクールでは、成績とランキングで子ども達を追い立てます。もし90/100のスコア以上取れなければ、学校は親に対して家庭教師を雇うか、より成績にあった学校に転校することを薦めます。これは学校自身のランクングを維持するためです・・・・何か変ですね!?教育の目的はなんでしょう?こんな教育が正しいでしょうか?子どもが何も悪いことをしていないのに“排除”されていくと言うのはどういうことでしょう?
また最近新聞を賑わせている話題の一つに、宿題の多さがあります。私の娘が通っている幼稚園でも毎日2−4個の課題が出されます。もっとひどいところだと、幼稚園児に週末にかけて14個もの課題が与えられる所もあるようです。そして、子ども達はこの宿題をこなすために「遊ぶ」のです。
最後に香港でのおもちゃで遊ぶということについて、少しお話しします。
私は、ラキューの代理店として7年間活動してきました。その中で、たまに大変創造性のある良い作品を作る子どもたちに出会うことがあります。この子達は、宿題と習い事とランキング維持の競争の中でどうやってこの素晴らしい作品を作ることが出来たのでしょうか? これらの子ども達の親に共通して言えることは、このような忙しい毎日の中でも毎日2−3時間子どもが自由に遊べる時間を確保していると言うことです。このような時間で創造性を子ども達は身につけています。ただ多くの親達は、子どもの宿題や成績を維持するために子どもと一緒に遊ぶ時間をあきらめています。
全ての学校は、香港中でもまれな非常に才能豊かな頭の良い子どもを探しており、多くの親達は自分の子どもをその仲間に入れたいと頑張っています。4歳児がすでにピアノではグレード2を取得しています。また様々な競争で格付けされ、小学校に入る前に50メートルの水泳が泳げるようになり、大会ではチャンピオンになることを求められています。そしてこの課題をクリアしたもののみがドラゴンスクールに選ばれるのです。
言語は、英語・北京語・広東語が話せなければなりません。
以上の様な状況からはっきり言えることは、香港ではほとんどの子ども達は、幸せに育つことは困難であると言うことです。これらの競争のなかでは、健全で健やかに子どもが育つことは不可能です。また、このような教育によって本当に学術的な成果を達成することは困難でしょう。
子ども達は、虚栄・宿題・成績・授業・修学旅行等々の様々なプレッシャーの中で本当に幸せな子ども時代を失っています。香港の現在の教育システムは、子ども達の自己肯定感を低くし、子どもがその子自身の本当の才能を開花させることや、子ども自身が本当になりたい夢を抑圧しています。
子ども達は、この現状の香港で「天才・秀才」になることを強要している親達を憎んでるように思われます。このような子ども達が育っていったとき香港の将来はどうなるのでしょうか?またこの状況が子ども達の精神にどのような影響を与えているのか、大変心配です。
リトアニア
1、あなたの国の社会的問題が、子ども達の発育にそのような影響を与えていますか?
まず、リトアニアでは多くの欧州諸国と同様に少子高齢化が進んでいます。具体的には、リトアニアの合計特殊出生率は1.6人(2012年のEU平均は、1.58人、日本は2013年1.39人)です。さらに大きな問題として、ポスト共産主義の政治と経済の移行による地域経済格差問題と移民問題があります。これは、リトアニアのEU加盟により人と通貨の行き来が自由になった結果、リトアニアから大規模な人口流出が起こっています。
移民により、独立後の25年間で人口の4分の1にあたる788,000人の人口が失われ、現在のリトアニアの人口は2,900,000人となっています。さらに2004年のEU加盟以来、毎年3万人から4万人の人が移民で出て行っています。今後の予測では、2004年にはバルティック3国全体で人口が2百万人程度になってしまうと言われています。
次に社会的格差については、リトアニアのジニ指数は34.6(EU平均が28、ノルウェイが22.7、日本は34、アメリカは39)です。首都ビリニュスや海港クライペダまたは他の大都市に比べて、地方に住む子どもやその家族へ所得格差と機会の不平等が著しくひどくなっています。
以上の様な社会問題は特に子ども達に大きな影響を及ぼします。つまり子ども達の両親は、お金を稼ぐために西ヨーロッパや北欧諸国へ移民していきますが、多くの場合子ども達は祖国に取り残されてしまいます。彼らは祖父母、親類あるいは隣人に預けられ、またひどい場合は子ども達だけで生活している場合もあります。かれらは仕送りにより物質的には若干豊かですが、しばしば愛情に飢えており、発育上心のケアを必要としています。
2、社会的環境で子どもにとってポジティブな影響はありますか?
ベルリンの壁が崩壊した後に生まれたポスト共産主義の子どもは、「自由の子」です。彼らは特別な存在です。既に両親に成功の機会が与えられ、ソビエト時代の社会的排除を経験していません。また21世紀に生まれた人は、公共サービスが整備され「福祉の子」でもあります。彼らは、30代・40代の世代で「黄金の世代」と呼ばれています。
彼ら「黄金の世代」は、世界中の高い技術と様々な知識を得る機会を与えられるとともに、ソ連体制で育った彼らの両親や祖父母から彼らが生活した様々なトラウマの知識も持ち、自分たちが如何に恵まれており、そしてその恩恵に感謝しつつ社会的に役立てなければならないかを認識しています。これはあたかも日本の戦後世代が戦前・戦中の世代からのそのトラウマを受け継ぎつつ戦後の高度経済成長をなし得たのと似ています。
また、小国の常として、言語学習につては早期に開始し、外国語については数カ国後を操り、特に英語はかなりのレベルで習得し、国際的キャリアを習得するには非常に有利です。
3、社会状況が子ども達に与えているネガティブな面
ゴールデン世代の一部の人たちは、物質的な欠如や社会制度上の不幸を全く経験せず物質的に恵まれていたために、かなりスポイルされてしまった人々もいます。彼らは、将来的に「安易に流される」ことによる困難に直面する可能性があります。
さらに地方と都市の経済格差により、より貧しい子ども達は、学校やその他の地域社会で豊かな子ども達からの冷笑や様々な心理的プレッシャーやストレスを与えられています。これらの子ども達には、成功のための機会を与えられることは非常にまれで、このことが子ども達の発育にも悪影響を与えています。
しかし、リトアニアはEU加盟国の中では、GDP成長率が最も高い国の一つです。(2014年のGDP成長率は、2.9% EU加盟28カ国平均は1.3%)この状況が続けば、豊かさが社会に波及し現状の社会的格差が解消していくのではないかと考えています。
スロバキア・チェコ
1、あなたの国の社会的問題が、子ども達の発育にそのような影響を与えていますか?
私たちの世代(40代男性)は、二つの社会システムで生活する機会がありました。一つは、ハンガリー、スロバキア、チェコ、ポーランドはソビエト連邦と言う名の下にロシアの衛星国として管理され、中央集権的な社会主義の経済システム、もう一つはソビエト崩壊後の自由市場経済システムです。私はこの2つのシステムの長所と短所を比較することが出来ますが、どちらかと言うとこの自由市場経済システムの最近20年の方が問題が多いように感じています。
過去の政府では、治安や地域社会・雇用そして家族のためのサポート、幼児教育、各種学校における教育システムやクラブ等の課外活動に十分な予算と時間が確保され、非常に高いレベルで運営されていたように思います。というのも、現在私たちは、学校教育において過去になかった様々な問題に直面しているからです。
その一番大きな問題は、学校の1クラスの人数が、20名から35名に増えたこと、時代に取り残された魅力のない古い方法の授業、予算不足による教育設備が更新されないこと、くだらないアメリカ製の漫画、映画、ドラマがテレビにあふれていること、フェスブックをはじめとするSNSの普及などの影響により、学習障害の子ども達が劇的に増えていることです。
この問題の大きな原因は、国の政府や州の自治体、さらにコミュニティーを形成している大人達が、気持ちの持ち方や思考方法や慣習について、現在のような社会体制の変化に対してなんらの準備もしていなかったことです。
そして最も危緊の課題は国(教育機関・学校・政府・自治体)のどこにもお金がないことです。二番目の問題は、高い失業率・低賃金です。多くの親は、政府からの補助がなければ、子ども達に必要な学用品を買うだけの余裕がありません。さらに悪いことには、親達は彼らの生活を維持するために2つの仕事を掛け持ちしなければならず、ほとんど子どもと過ごす時間を持つことが出来ていません。子ども達は、一日の大半を親の居ない状況で生活をしています。また学校の後、子ども達は帰る場所がなく、最低限のレジャータイムは、寄付や公的補助による学童保育所で過ごしているのです。ただその施設でさえ不正や汚職にまみれています。これはまさに「地上の地獄」へ向かっているとしか思われません。
統計的な平均給与は750€(97,500円)ですが、実際的にほとんどの人は600€(78,000円)しか稼いでいないでしょう。社会や人々の生活の価値は、全てお金によって計られるような価値観に変化しています。見習うべき社会規範やモラルが失われています。そして以前の価値観に変わって、漫画や映画やテレビの中に戦いや目を潜めるような振る舞い、怠惰、憎悪・暴力等々が溢れています。正直私は、この全ての原因が自由市場経済システムにあると考えています。至る所でお馬鹿な玩具の広告を見ることが出来ますし、子ども達は漫画や映画、テレビ放送によって大きな影響受けています。親や学校や社会から規範が失われ、全ては自由市場経済と拝金主義に支配されています。
家族が信頼や愛情を育む時間が最小限に押さえられ、人生が猛スピードで過ぎ去っていきます。子どもから学内での課外活動の時間や習い事の時間さえも奪われています。教師のサラリーは子どものお小遣いよりも少ないことも良く見受けられます。このような状況において教師が子どもへ好ましい影響を与えることができるでしょうか。
2、社会状況が子ども達に与えているポジティブな面
○ 子ども達は、私たちの世代よりも進歩した社会で生活しているので、電子機器を抵抗なく使うことが出来ます。
○ そしてこれらの電子機器は、子ども達の教育や経験にとって新しい扉を開くことが出来ます。しかし現実には彼らは、ゲームやFacebookのみに没頭し、本来の好ましい使い方をしていません。
3、社会状況が子ども達に与えているネガティブな面
○ 子ども達は、多くの選択肢を持っているにもかかわらず、お馬鹿な漫画や映画、テレビコマーシャルに洗脳され、生きる指針を見失っています。
○ 玩具のコマーシャルは、子どもの能力向上や技術開発、創造性、インスパイやする力にたいして、全く意味を持っていません。これは子どもにとって商業主義や拝金主義に接する最初のきっかけとなっています。
○ 電子玩具は、小さい子どもには全く適していないにもかかわらず、これらの玩具が、強力な広告と社会的影響により蔓延しています。そしてこれらの玩具は、野原を駆け回ったり自転車に乗ったり、想像力を駆使してファンタジーの世界を切り開くことから子どもたちを遠ざけています。結果として学校において学習障害の子ども達が急増しています。
○ 子ども達は、FacebookやSNSといった彼ら自身の電子機器に没頭するあまり、現実社会とのコンタクトを失っています。
○ この現実に対して、多くの学校は現代的な電子機器を導入することが出来ず、また教育課程で有効に使いこなすことも出来ていません。教師達は、状況を変えたいと思っているものの、彼らのスキルと創造性は全く追いついていない状況です。
○ 忙しすぎる両親は、このような問題に対処し、健全に子どもが成長するために十分な時間を子どもと共有することが出来ていません。ほとんどの場合、以前のような生きる指針が子ども達に示されておらず、もしあったとしても安直な正義の味方や戦士像に置き換えられてしまっています。
○ 最後に20年歩程前から、子ども達は早い時期から「子ども時代」と言うものを失ってしまっており、玩具の役割は全く以前と変化してしまいました。10歳から12歳の子ども達が、一般的な玩具で遊ぶことはむしろレアケースで、彼は早い時期からスマートフォンやタブレットを好むようになっています。
南アフリカ
1、現在の社会状況が子どもにどのような影響を与えていますか?
現代の親達は、テクノロジーやソーシャルメディアに忙しすぎて、子ども達と時間を共有したり、遊んだりする時間が全くありません。
2、社会状況が子ども達に与えているポジティブな面
現代の社会では、子ども達は、親から適正な道具と教育を与えられれば、より良い場所に行けるし、世界を征服することも不可能ではない。彼らは自信を持って自分自身を成長させ、他者に与え、世界に貢献することが出来る。
3、社会状況が子ども達に与えているネガティブな面
南アフリカの家族にとって、離婚や虐待やドラッグと同様に貧困が大きな問題で、大きな影響を与えています。彼らにとっては経済的問題に対処するため、子どもをテレビや電子機器に縛り付け、子どもと時間を共有することに全く無関心になってしまっています。またこのような環境で育った子どもは、Facebookのみに依存し、相互に作用しあうような現実のコミュニケーションスキルを持っていないことが多いです。
では、ここで、南アフリカの社会状況について要約します。
南アフリカは、年率3%の成長を続けており、現在世界で23番目の経済規模に成長しています。2002年が35位の経済規模でしたので、着実に成長しています。
インフレ率は、1994年頃は14%であったのが、現在は6.5%まで低下しており、経済的には安定していています。またアフリカ民族会議は、ビジネス投資の最初の10年間は、16%の金利水準を9.25%に引き下げています。これは、ビジネスを始める人にとっては良いことで、このことにより新しいビジネスが生まれ、雇用が拡大することが期待されます。
財政赤字は、1997年にGDP比8%あったものが、2004年には1.5%となり、ほぼ均衡財政となっています。
南アフリカで生産された商品の25%が輸出され、これは1994年に比べて10%の増加です。さらに南アフリカの黒人の車の所有率は1994年に比べて10倍になっています。
以上のように経済発展は続いていますが、以前公式発表数字で失業率が31%を超えており、これを解消するには十分な経済成長率とは言えません。理想的には年率6%の経済成長率が必要です。
また、特にIT分野における仕事上のスキルの不足が、雇用創出を阻害しています。
南アフリカの現状は、「雇用なき経済成長」のようです。会社は、あたらしテクノロジーと外国からの投資により利益を得ていますが、雇用されていない巨大な失業者達に仕事を与えることはしていません。
人口の約43%の人たちの月収は、5400円以下で貧困ラインを下回った収入しか得ていません。
政府は、公務員給与を極めて低い水準に維持し賃金の上昇を押さえています。このことは、アフリカ民族会議政府と労働組合との信頼関係に深刻なダメージを与えています。
1994年以降、企業の役員報酬は年率29%の上昇を維持しているにもかかわらず、労働者賃金は6%しか上がっていません。とくにアフリカ民族会議が力を持ったこの10年間は、2百万人の雇用が失われました。
国際社会において、現在南アフリカは魅力的な投資先として期待されているようです。しかし進出企業は、南アフリカに低い公共料金で低い法人税で協力的な労働者を求めています。しかしその反面、数百万人の貧しい南アフリカ人は、より良い給与と労働保障、年金、さらにより良い公共サービスが提供されるために法人税の増税を求めています。このため公共部門がストライキを行い、これをカバーする民間の仕事が増加することは、多くに人々によって歓迎されています。
南アフリカはちょうど二階建てバスに例えられるでしょう。このバスはお金持ちを二階に乗せて、一階には貧乏な人を乗せて旅行しています。ただ、この二つの階には階段がありません。
当面、政府は国際社会の繁栄に寄与し、企業進出と投資を奨励することに断固として取り組んでいくでしょう。そしてこの政策が、徐々に全ての南アフリカの国民に経済的な繁栄を行き渡らせるであろうと言うことに大きな期待と自信を持っています。
韓国
1、韓国における子どもの環境に及ぼす社会問題
多くの親は自分の子どもを有名大学へ進学させ、良い企業に就職させたく、幼少期の頃から教育熱心です。子ども達は幼い頃から塾や習い事に通い、特に年齢が低いうちに習わせた方がよいとされている外国語教育等の勉強に多くの時間を費やしております。
私個人の意見としては、小学生であるのに放課後一緒に遊ぶ友達がいないような環境は子どもにとりあまり好ましくないことと思っています。
家庭の状況は核家族化が進み共稼ぎの夫婦が急速に増え離婚率も高くなっています。シングルになった親の子ども達の世話は祖父母に任せられていることがほとんどです。
最近、悪質な幼稚園の指導者達が5歳から7歳児へ食物ハラスメント、肉体的虐待を行っていることが問題になりました。親達の怒りにより政府は幼稚園指導者の質の基準を決め、違反したものに対して厳しい処罰を課す法律を定めました。
2、子供に及ぼすプラスの影響
子どもたちの教育レベルは大変高く急速な韓国の社会発展に貢献しています。私が知る限り、他の国に比べると韓国の子供の学習競争率はより高いものでしょう。
現代の一般的な韓国の家庭の子どもの人数は1人か2人です。前の世代に比べると親は1人の子どもに対し、多くの投資を注ぐことができ、特に物質面において子ども達は苦労することなく生活を楽しめる状況にあると思います。
3、子どもに及ぼすマイナスな影響
学力競争社会が子どもに大きなプレッシャーを与えている状況です。ストレスから、自殺に至る事件も起きています。
物質面において恵まれている子ども達ですが、誰も教えてくれない親の苦労や感謝の気持ちをしらずしている子どもたちも多くみられます。
子どもを守る安定した安全管理システムがないため、子ども達は日々、肉体的、精神的な暴力に直面する状況にあります。脅威に怯え本当の事を明かせず、心に深い傷を持つ子どももいることでしょう。
スウェーデン
福祉社会国であるスウェーデンにおいて大きな社会問題はないように思っていましたがインターネットで調べてみるとこのような国でも社会問題が存在していることがわかりました。
1、社会問題が与えている子ども環境への影響の現状
スウェーデンのユニセフは経済的な問題により社会や学校から疎外された子ども供達へのサポートに取り組んでいます。
スウェーデンでは子ども達は平等に教育を受けられる権利(義務教育以外において)、快適な生活水準を得られ、社会保障により暴力などの危険から保護される権利等を有し、文化を楽しみレクリエーションに自由に参加できるような社会を築きあげてきました。
2、子ども達へのプラスの影響
経済的な問題により社会や学校から疎外された子ども達が存在している部分においては何のプラスの影響を見出せていない状況だと思います。
3、子ども達へのマイナスの影響
経済的な問題により社会や学校から疎外された子ども達は他の子ども達と同じ土台で能力を発揮するチャンスを得られず、悪い食習慣や学校での問題から、自信喪失に陥り、発達面においても長い期間において悪影響を及ぼされるような危険にさらされています。
疎外問題が存在する社会において一番の犠牲になっているのが子ども達です。
また、この問題の解決に必要な保険医療費、特別教育費、社会費を増やすことは社会に大きな負担をもたらします。
各国代理店からの報告は以上の通りです。2016年と2020年では、香港などは中国からの政治的な圧迫もあり、また昨年からは全世界的にはコロナウィルスの蔓延もあり現在は、非常に違った状況となっている国もありますが、子どもが置かれている状況としては、それぞれの影響が進行してより大きくなっているのではないかと感じます。
では、我が国の状況はどうでしょうか、まずは統計的な状況からみると以下の通りです。
2020年の世界のG D Pランキングを見てみると、1位アメリカ・2位中国・3位日本となっています。G D P(国内総生産)とは、その国が1年間で作り出す付加価値の総合計のことです。これには人口規模も大きく関わっていますから、人口が世界で一番多い中国が最近は上位に入ってきました。
では、一人あたりのG D Pランキングはどうでしょうか?現時点での一人当たりG D Pランキング統計は2019年が最新ですが、1位がルクセンブルク、2位がスイス、3位がアイルランドで、人口を加味した場合とかなり様子が違いますね。では日本はというと181ヵ国中25位です。ちなみにバブル景気がピークを迎えていた1989年の1人あたりのG D Pランキングは、4位であったことを考えると経済的にも2000年代に入りかなり順位を落としていますのが、経済的な豊かさという観点からすると依然上位と言えるのではないかと思います。
では、一方で、毎年国連から発表される世界幸福度ランキングというものがあります。このランキングは、153カ国の対象国で実施した世論調査をもとに、自分の幸福度が0から10の10段階で自己評価した主観の平均。その結果を、「一人当たりGDP」「健康的な平均寿命」「困ったときに助けてくれる友達・親族はいるかとの二元回答」「人生で何をするか選択の自由があるかとの二元回答」「GDPにおける寄付実施者の度合い」「政府機関に腐敗は萬栄しているかの二元回答「昨日楽しかったかどうかの自己認知の度合い」「機能楽しくなかったかの自己認知の度合い」の6つの説明変数で順位付けしています。
2020年度の発表で日本は62位、日本の評価の低い項目は、「寛容さ」と「主観満足度」だそうです。ここ最近の状況として2019年度は58位、2018年度が54位と元々低かった順位がさらにジリジリと幸福度が悪化しているという感じです。では、上位の国々はといえば、1位がフィンランド、2位がデンマーク、3位がスイスと北欧諸国が上位を独占しています。またユニセフが発表している『レポートカード16』によれば、日本の「子どもの幸福度」の総合順位は20位でした(38カ国中)。この総合順位は、以下の3つの分野を総合した順位です。
〇精神的幸福度:日本順位37位(生活満足度が高い子どもの割合、自殺率)
〇身体的健康:日本順位1位(子どもの死亡率、過体重・肥満の子どもの割合)
〇スキル:日本順位27位(読解力・数学分野の学力、社会的スキル)
この結果では、総合順位の低さもさることながら「精神的幸福度」に至っては、先進国38カ国中下から2番目の37位とのこと、いかに日本の子供たちが、精神的に追い詰められているかが如実に現れています。
また若年者の自殺者数については、多くの先進国では若者の死因の1位が事故であるのに対して日本では、若者の死因の1位が自殺となっており自殺者数は、2位の事故の2倍以上の人数の若者が亡くなっている状況があります。
以上見てきたように統計的なデータをみるとどうも、「人が人として人間らしく生きる」という観点からは、どうも日本の社会状況はネガティブな面が勝ってしまっているように思われます。
これに対して、ワールドビジョンが支援する貧困エリアに住む子ども達の生活状況はどうでしょうか?
このエリアに住む子どもたちは、それぞれに大変な状況を抱えており一概に平均化することは難しいのですが、あえて大きく2つの状況に分けるとすると一つ目は経済発展に出遅れているエリアにおける困難と二つ目は紛争地域に属している困難の2つの状況で生活している子ども達です。
前者は、金銭的な収入が低く、清潔なトイレや安全な飲水などに問題があっても日々の暮らしについては、政治的に比較的落ち着いているエリアで、ヨシリツでは、このような国々10カ国の10人の子ども達をマンスリープログラムという形で支援しています。
そして、これらのエリアに住む子ども達から定期的にお手紙が届くようになっているのですが、その手紙からわかることは、これらの子ども達は、両親と祖父母・親類など大家族で生活していることが多く、人間的な関係性は近しい人としっかりと信頼関係や人間関係を築きながら生活している様子が窺えます。そして彼らは、将来はその身近な人たちのために役立つ人間になりたいという思いを持っています。彼らの手紙には国際機関やN G Oから受けられる支援によって得られる学びに感謝しながら、将来は先生やお医者さんになって家族や親族また地域のために活動できるようになりたいと言うことが書かれています。
この手紙にあるメッセージについて、多少は支援者やN GOへのリップサービが入っていることを考慮に入れても、将来に絶望して希望が持てないという感覚なあまりないように思われます。
ただ、後者の紛争地域やこれに関わる難民キャンプは、本当に苛烈な生活環境で、まさに日々生存の危機に脅かされている子ども達がたくさんおり、国際機関やN G Oの緊急支援を日々必要としています。このような環境下にある子ども達は、日々精神的に追い詰められ、悲惨な状況にありますので、決してこのような子ども達がいることも忘れてはならないのですが、このワールドビジョンと共催したパネルディスカッションの企画を通じて私が感じたことは、経済的な豊かさが、精神的な豊かさを保証するものではないし、「人が人として、人間らしく生きる」ということの意味を現代日本の社会状況においては、改めて問い直す必要があるのではないかということでした。
