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LaQに学ぶ 中小企業のマーケティング

LaQに学ぶ 中小企業のマーケティング #2 「こんな地味なブロック、売れまへん」——合わない売り場に、二年を使った

前回は、1995年に奈良へ帰って、商品も在庫も特許もあるのに売り先がない会社の数字を見た、というところまで書きました。今回は、そこから最初に何をやって、どう外したかの話です。

まず、経費を削って、飛び込み営業に出た

帰ってすぐにやったことは、二つでした。
一つは人件費です。ブロック事業を立ち上げるために、地元の役所に長く勤めていた方を事業部長として雇っていました。悪い方ではありません。ただ、ご自身で作った業務規則どおりに夕方五時前には片付けを始め、五時には会社にいない。新しい事業を一から立ち上げる仕事とは、どうしても噛み合いませんでした。費用の負担も重く、辞めていただきました。あとは、削れる経費を徹底的に削りました。

もう一つは営業です。削るほうは数週間で終わります。終われば、売るしかない。おもちゃ屋さんへの飛び込み営業を始めました。
玩具問屋との取引は始まった。売上は伸びなかった

飛び込みの中でご紹介をいただき、玩具問屋さんとの取引が始まりました。これで流通に乗る、と思いました。ところが、一向に売上が伸びません。
問屋さんにも、その先のおもちゃ屋さんにも日参しました。返ってくる言葉は、だいたい同じでした。

「5,000円もする小さなゲームソフトが飛ぶように売れるのに、こんなかさばった地味なブロックなんか売れまへん」

当時の玩具流通。問屋に置いていただいても、消費者の目に届くところまでは行きませんでした


反論できませんでした。当時は、任天堂のスーパーファミコンソニが絶好調で、ソニーがプレイステーションを発売、そしてマイクロソフトがXボックスを投入してテレビゲーム全盛期!当然これに関連してゲームソフトも絶好調の時期です。小さくて、単価が高くて、回転が速い。限られた棚をどう使うかという観点では、向こうの言い分のほうが正しいのです。LaQは箱が大きく、単価は同じくらいで、しかも手に取って遊んでもらわないと良さが伝わらない商品でした。

会計の言葉に直すと、小売店が見ているのは棚一本あたりの粗利額であって、商品そのものの良し悪しではありません。同じ面積に何個置けて、何回転するか。その計算式に、うちの商品は最初から負けていました。良い商品だから置いてくださいという話が通じないのは、相手が商品を見ていないからではなく、別の数字を見ているからです。

当時の玩具流通は、トイザらスに代表される大型店が主役になり、個人の小さなおもちゃ屋さんはほとんど壊滅的な状況でした。効率のよい商品を効率よく流す仕組みが出来上がっていて、うちのような零細メーカーの新商品は、その中でただ翻弄されるだけです。問屋さんに置いていただけても、消費者の目の届くところまでは行きませんでした。

ニッチでは認められた。それでも焼け石に水だった

そこで問屋さんを通さず、小さなおもちゃ屋さんを一軒ずつ開拓しました。これは少しずつ効きました。ヨーロッパの高級玩具を扱うようなお店で認めていただけるようになり、保育園や幼稚園で使ってくださるところも増えてきました。

子どもに渡すと、本当によく遊ぶ。消費者の手に届くところに置けさえすれば、売れる。それは確認できました。

ただ、そういう売り場は玩具流通の中ではかなりニッチです。一軒ずつ説明して、一軒ずつ置いてもらう。手応えはあるのに、母数が増えない。当時の財務状況からすると、焼け石に水でした。「何とかしてマスで展開できる市場を開拓しなければならない」と思いながら、決め手がないまま、資金だけが減っていきました。

いま振り返ると、この時期の私は「正しいやり方で、間違った場所にいた」のだと思います。やっていること自体は間違っていません。足で回り、説明し、置いてもらう。ただ、その努力を積み上げても届かない天井のある場所にいました。

狙った相手と、実際に評価してくれた相手。ズレていたのはSTPのSとTでした


理論で言うと
ここで起きていたのは、商品力の問題ではありません。差別化はできていました。できていなかったのは、前回も書いたSTPのS(セグメンテーション)とT(ターゲティング)、そしてチャネルの選び方です。

私たちが最初に当たった相手は、既存商品である栓抜きの取引先と、玩具問屋でした。「いま付き合いのある相手」と「業界の正面玄関」です。どちらも、こちらの都合で選んだ相手でした。

一方、実際にLaQを評価してくれたのは、小さな専門店と、保育園・幼稚園という幼児教育の現場です。商品の性質——手に取って時間をかけて遊ぶと価値が出る——と、売り場の性質が一致していた相手でした。

チャネルは、ただの通り道ではありません。その商品がどう扱われ、どう見られるかを決める、売り方そのものの設計です。回転の速さで評価される売り場に、体験してもらわないと伝わらない商品を置いても、評価されようがない。顧問先の新商品が動かないとき、私はまず「どこに置いているか」を聞くようにしています。

二年を、無駄だったとは思っていません
それでも、この時期があったから、一つだけはっきりしたことがあります。
商品は悪くない。置き場所が違う。
これが分かっていたから、次に父が言い出した突拍子もない提案に、乗ることができました。

次回予告
第3回は、散髪屋とガソリンスタンドの話です。資金が尽きるまであと数か月というときに、創業者で発明者の父が「この商品は散髪屋で売れるぞ」と言い出しました。三百軒以上を回って、売上にはほとんどつながりませんでした。それでも、あの実験には意味があった!
(次回に続く)

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筆者:吉條嘉家(公認会計士・税理士)/Kakitsu株式会社 https://kakitsu.co.jp/

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