こんにちは、Kakitsuです。「BLoQ管理会計」開発日誌の第11回です。前回は、予算づくりに順番と合図を持たせた話をしました。今回は、業種によって採算表の形そのものを変えたという判断についてお話しします。自分が最初に掲げた設計思想を、途中で半分ひっくり返した回でもあります。
製造原価報告書に飛んでしまう数字
そもそもこのシステムを作り始めた動機の一つが、製造業の決算書では製造部門の費用が製造原価報告書のほうへ行ってしまい、販管費として並ぶ他部門と同じ土俵で採算を比べられない、という不満でした。稲盛和夫氏のアメーバ経営は、各部門が同じルールのもとで採算を競うところに要があります。製造部門だけが別の紙に書かれていては、そもそも競争になりません。ですからBLoQ管理会計は最初、製造原価の科目も採算表の中に取り込み、製造部門も他部門と横並びで比較できるという思想で作り始めました。実際に製造原価の勘定科目を採算表側へ割り当て、その合計が製造原価報告書の金額と1円も違わないことを確かめています。
ところが、非製造業では話が違った
ところが、お客様が増えていくと、多数派は非製造業でした。そして非製造業の現場では、原価が固定だったり、売上に対する率でおおよそ決まっていたりして、現場の裁量ではどうにもならないことが多い。仕入の条件も単価も上流で決まっているのに、変動費と固定費に切り分けて「経費最小」を競わせても、現場にできることがありません。
稲盛氏の考え方の前提には、「採算は自分たちの努力で動かせる」があります。値決めをし、工夫をし、その結果が数字に出る。だから全員参加の経営が成り立つわけです。逆に言えば、自分では動かせない数字で評価されたとき、人に生まれるのは工夫ではなく諦めです。得点板は、自分のプレーの結果が映るものでなければ意味がない。この連載で何度か書いてきた話と、そのままつながります。
非製造業は、損益計算書の形に戻した
そこで非製造業については、製造業型の体系をやめ、損益計算書と同じ並びに戻しました。収益項目、売上原価、そして売上総利益。経費を引いてブロック利益。人件費を引いて営業利益。以下、営業外損益から当期純利益まで、決算書と同じ順番で小計が並びます。
一つだけ決算書と違うのは、人件費をブロック利益の後ろに置いたことです。人件費を引く前の採算を見る、という京セラ式の考え方に合わせています。ある会社の実データでこの引き算を通してみたところ、売上総利益が従来の差引売上と、ブロック利益が従来のブロック利益と、営業利益が従来の利益と、それぞれぴったり一致しました。見せ方を変えただけで中身は変えていない、という確認になりました。
業種は、勘定科目が教えてくれた
どちらの形で表示するかは、freeeの勘定科目から自動で判定しています。製造原価報告書を使っていない事業所には「製造原価」カテゴリの科目が1件も返ってこないので、判定としては安定します。判定結果と手動設定は列を分けました。1列に混ぜると、判定の仕組みを直したときに人が決めた設定まで上書きしてしまうからです。
体系の組み替えに踏み切れたのは、金額が大項目や中項目に紐づいていなかったからでもあります。実績も予算も勘定科目の割当単位で保存しているので、表の骨組みを組み替えても数字は動きません。もう一つ決めたのは、権限の都合で見えない大項目があるときは、その小計も出さないことです。ブロック長に見えるのはブロック利益まで。引いていない費用を引いた顔をした小計を出すくらいなら、出さないほうがいい。
原価が「率」で決まるなら、率で計上する
その後、非製造業のお客様から「売上原価を、売上に対する率で毎月置きたい」という要望が出ました。背景を調べると、月次では実地棚卸をせず仕入の計上が月によって偏るため、月次のブロック利益がその月の実力を表していませんでした。ある月は原価率が3割近く、別の月は1割強、というような振れ方です。これでは、頑張った月も頑張らなかった月も、数字の上では区別がつきません。
そこで、部門ごと・月ごとに原価率を置いて売上原価を計算する方式を用意しました。決めたことが三つあります。予算にも同じ率を当てること。実績だけ置き換えると、予実比較が別のルールどうしの比較になってしまうためです。率を置いていない月には原価を置かないこと。0円で計上すると、設定漏れが「原価ゼロの好成績」に化けてしまいます。そして製造業でこの方式を指定したらエラーにすること。製造原価報告書の体系を1本に潰してしまうと、内訳が追えなくなるためです。
採算表の形は、業種によって変わります。変わらないのは、そこに並ぶ数字が、それを見ている人自身の手で動かせるものかどうか、という問いのほうでした。
残った宿題
freeeの数字との照合は、いまのところ毎回その場限りのスクリプトで確かめています。採算表に取り込む対象から外れている部門に直接計上された仕訳は黙って落ちてしまうので、この照合を画面の常設機能にしたいと考えています。前回予告した目標値とアラートの話は、長くなるので別の回にまとめます。
次回予告
第12回では、本番運用に向けたデータベースの引っ越しと、性能改善についてお話しします。
(次回に続く)
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