はじめまして。もともとはおもちゃの企画の仕事をしていましたが、今は公認会計士・税理士として法人のお客様の会計・税務を担当しているKakitsuです。
この夏、あるお客様からの相談をきっかけに、部門別の利益と労働時間当たりの採算をリアルタイムで見える化する「BLoQ管理会計」というWebアプリを自社で作りました。この連載では、要件定義から実装、リリースまでの過程を、開発日誌として少しずつ公開していきます。第1回は「なぜ公認会計士・税理士事務所が自分でシステムを開発することにしたのか」というところからお話しします。
きっかけは「毎月の試算表だけでは経営判断が遅い、そして次の打ち手が具体的に分からない」という声
複数の店舗・部門を運営されているあるお客様から、こんな相談をいただきました。
「クラウド会計に日々の数字は入っているのに、部門ごとの採算が見えるまでに時間がかかる。稲盛和夫氏のアメーバ経営のように、部門単位で『今月いくら儲かっているか』をもっと早く、もっと細かく知りたい」
クラウド会計の部門別レポートを使えばある程度は見えるのですが、部門ごとの「アメーバ利益」「時間当たり採算」といった経営指標に組み替えること、予算と実績を並べて見ること、経営者・部門長・スタッフにも権限に応じて見える範囲を変えて見せること——といったことまでは、既存のクラウド会計の標準機能だけでは難しく末端の従業員までアカウントを付与するとクラウドサービスの運用コストが膨らみすぎるのが実情でした。市販のBIツールも検討したのですが、会計データとの連携やアメーバ経営特有の指標をゼロから設定するコストが小さくなく、「それなら自分たちで作った方が早いのではないか」という発想に至りました。
公認会計士・税理士がシステムを作る、という選択
正直なところ、最初は無謀な思いつきに近いものでした。ただ、freee会計だとクラウド上にAPIが公開されており会計データの取得・連携がプログラムから可能なこと、生成AI(コーディングエージェント)の進化で実装のスピードが以前とは比較にならないほど上がっていること、お客様の業務・会計の実態を一番理解しているのは外部のシステム会社よりも顧問の公認会計士・税理士である自分たちであること――という3つの条件がそろっていたことで、「要件定義から実装まで、自社で一気通貫でやってみよう」と決めました。開発にはClaude CodeというAIコーディングエージェントを使っています。会計・税務の専門知識をこちらが提供し、実装をAIと一緒に進めるという形です。
初日にやったこと
2026年6月12日、Claude Code Fableがリリースされた直後からこれをフル活用する形でプロジェクトを開始しました。まずお客様からいただいた要件資料(Excel・PowerPoint)を読み込み、要件定義書と開発工程書(全8フェーズ・約19週間の計画)を作成。そのうえで、会計APIとの疎通確認、画面のワイヤーフレーム、データベース設計、技術選定(Next.js + TypeScript + PostgreSQL構成)まで、初日のうちに基本設計を固めました。
さらにその日のうちに、認証機能と会計連携の土台、勘定科目や部門といったマスタ情報の取込みまで実装が進み、検証にご協力いただいたお客様の実データを取り込んで動作確認まで完了しました。当初の計画では「基本設計に2週間」を見込んでいたのですが、実際には初日のうちにここまで進み、これ以降も想定より早いペースで開発が進んでいくことになります。
次回予告
第2回では、freee会計との連携で実際にぶつかった技術的な壁(1回のリクエストで取得できる部門数に上限があったことなど)と、それをどう乗り越えたかをお話しします。
(次回に続く)
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